こんにちは、株式会社ラムセス代表の池田です。2018年10月に当ホームページで「2022年問題 生産緑地指定解除」をご紹介させていただきましたが、今年から生産緑地の解禁が本格化することを受けて、「特定生産緑地制度」が創られました。内容としては、これまでの優遇されていた税制を10年延長できるというもので、東京都調査によると東京都内の農家の方へのアンケートでは、約9割がそのまま維持するという結果でした。そう考えると、とりあえず今年は1割が農地から宅地に変わる可能性が高いものの、「来年以降は減らないのではないか?」と考えてしまいますが、おそらく来年以降も農地の宅地化は進むと予想されます。と言うのも、生産緑地指定解除の延長は、相続時に変更可能だからです。これまで生産緑地制度を使って、世帯主として30年農業を続けていた方であれば、すでに70〜80代になっている方々がほとんどですし、10年以内に相続が発生する方も多くいらっしゃるからです。その時に、相続された方が引き続き農業を行うのか?というと、かなり疑問です。そのため、相続が増えるのに応じて、徐々に農地から宅地へと変わる動きは続くと考えられます。それでは見ていきましょう。
1.生産緑地地区内における一定の行為の制限
(1)生産緑地地区「生産緑地地区」とは市街化区域内の農地や採草放牧地などを対象として良好な生活環境の確保や公共施設用地の確保の観点からその計画的な保全を図るために都市計画において定められる地区です。生産緑地地区の対象となる農地等は、現に農業の用に供されている農地の他採草放牧地や林業の用に供されている森林、さらに漁業の用に供されている池沼が含まれます(法第2条第1号)。これらの農地等のうち都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地に適したもの、500㎡以上の規模であるもの、農林漁業の継続が可能な条件を備えているもの、について指定することとされています(法第3条第1項)。但し、市町村は必要があると認めるときは、これらの規定にかかわらず、条例で、区域の規模に関する条件を別に定めることができます(法第3条第2項)。
(2)制限の内容(法第8条第1項)生産緑地地区内で建築物の新築や宅地の造成等の行為をしようとする者は、原則として市町村長の許可を受けなければなりません。
【許可を受けなければならない行為】
- 建築物その他の工作物の新築・改築又は増築
- 宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
- 水面の埋立て又は干拓
許可基準市町村長は、次に掲げる施設の設置又は管理に係る行為で良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと認めるものに限り、許可することができる定めになっています(同条第2項)。
- 次に掲げる施設で、生産緑地において農林漁業を営むために必要となるもの
イ農産物、林産物又は水産物(以下「農産物等」という。)の生産又は集荷の用に供する施設
ロ農林漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設
ハ農産物等の処理又は貯蔵に必要な共同利用施設
ニ農林漁業に従事する者の休憩施設- 次に掲げる施設で、当該生産緑地の保全に著しい支障を及ぼすおそれがなく、かつ、当該生産緑地における農林漁業の安定的な継続に資するものとして国土交通省令で定める基準に適合するもの
イ生産緑地地区及びその周辺の地域内において生産された農産物等を主たる原材料として使用する製造又は加工の用に供する施設
ロ イの農産物等又はこれを主たる原材料として製造され、若しくは加工された物品の販売の用に供する施設
ハ イの農産物等を主たる材料とする料理の提供の用に供する施設- 主として都市の住民の利用に供される農地で、相当数の者を対象として定型的な条件で、レクリエーションその他の営利以外の目的で継続して行われる農作業の用に供されるものに設置される当該農地の保全又は利用上必要なもの(施行令第5条)
一 農作業の講習の用に供する施設
二 管理事務所その他の管理施設
なお、都市計画法に定める田園住居地域内の生産緑地地区の区域内において、上記の施設設置又は管理に係る許可があつたときは、都市計画法第52条第1項(田園住居地域内における建築等の規制)についても、許可があつたものとみなされます(同条第10項)。【生産緑地法 適用除外】
- 公共施設等の設置や管理にかかる行為
- その地区が生産緑地地区として都市計画に定められた際、既に着手していた行為など
(3)買取りの申出
- 原則(特定生産緑地に指定されなかった場合)生産緑地に指定されてから30年を経過する日(以下、「申出基準日」という。)又は農林漁業者が死亡又は重度の障害者になったときは市町村長に時価による買取りの申出ができます(法第10条)。この場合、市町村長は自ら買い取るか又は買取り希望の公的団体を定めて買い取らせることとなっています(法第11条)。もし買い取ることができないときは農林漁業を希望する者にあっせんに努めることとなっています(法第 13条)。しかし、こうして買取りの申出から3ヵ月が経過してもこれらの者に所有権の移転がなかったときは建築行為等の制限が解除されます(法第14条)。なお、買取りの申出ができる要件がないときも特別の事情があれば買取り希望の申出ができます(法第15 条)。この場合、市町村等は買い取らなくてもよく、またその場合でも行為制限は解除されません。
- 特定生産緑地に指定された場合、市町村長は、申出基準日が近く到来することとなる生産緑地のうち、申出基準日以後においても良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるものを、所有者等の意向を基に特定生産緑地として指定することができます。(法第10条の2)。この特定生産緑地に指定された場合、市町村に買取り申出ができる時期は、申出基準日から10年延期され、さらに10年経過後は、改めて所有者等の同意により繰り返し10年の延長ができます(法第10条の3、第10条の5)。但し、特定生産緑地の指定は申出基準日までに行わなければなりません(法第10条の2第2項)。
★出典(公社)全国宅地建物取引業協会の重要事項説明資料「生産緑地法」より転記。