こんにちは、株式会社ラムセス代表の池田です。令和2年6月に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(以下「マンション建替え円滑化法」という。)に変更され、耐震性不足の認定を受けたマンションについては多数決でマンション及びその敷地を売却することができる制度の創設がなされるなど、大幅な改正が行われましたのでご紹介させていただきます。
1.背景
現在、我が国のマンションのストック総数は約590万戸であり、そのうち旧耐震基準により建設されたものが約106万戸存在し、それらの多くは耐震性不足であると考えられています。しかしながら、マンションの建替えはこれまで183件、約1400戸の実施にとどまっており、巨大地震発生に備えるために、耐震性不足のマンションの耐震化の促進が緊急の課題となっています。このため、耐震性不足のマンションの建替え等の円滑化を図るため、多数決によりマンション及びその敷地を売却することを可能とする制度を創設する等の所要の措置を講ずる必要があります。
2.改正の概要
- 耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者等の5分の4以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却を行う旨を決議することができるとされています(マンション建替え円滑化法第108条)。マンション敷地売却の制度を利用するには、特定行政庁といわれている都道府県知事や市町村長による耐震性不足の認定を受ける必要があります(マンション建替え円滑化法第2条8号、第102条)。その上で、集会を開き決議することになります。この決議には、区分所有者等の5分の4以上の賛成を得ることが必要となるのですが、この区分所有者等の5分の4以上とは、区分所有者の頭数と議決権の両方で5分の4以上になるとともに、マンションの敷地利用権(その敷地の所有権もしくは借地権)の持分割合で5分の4以上になることも求められています(マンション建替え円滑化法第108条第1項)。現行法において、マンション敷地売却をしようとすると、全員の賛成がない限りできない場合もあるのですが、改正法第108条によると耐震性不足などの要件を満たせば、5分の4以上という多数決でできるので、従来の建替え等より合意形成が容易になるわけです。
- 決議に係るマンションを買い受けようとする者は、決議前に、当該マンションに係る買受計画を作成し、都道府県知事等の認定を受けることができることとし、決議で定める買受人は、当該認定を受けた者でなければならないとされています(マンション建替え円滑化法第109条、第110条)。マンション敷地売却制度は、マンションと敷地を誰かに買い受けてもらい、耐震性不足のマンションを取り壊してもらうことが前提となっています。(7)で述べるように、取り壊し後に建てられた新マンションについて容積率制限を緩和することとするとの規定があるので(マンション建替え円滑化法第105条)、新しいマンションが建てられることが多いとの前提はありますが、取り壊した後に必ずマンションを建てなければならないとの規定はありません。その目的の達成のためにも、買い受けようとする者は、買受計画を作成し、都道府県知事等の認定を受けなければなりません(マンション建替え円滑化法第109条)。この「都道府県知事等」とはマンション建替え円滑化法第9条に規定が存在し、「都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)」と規定されています。この買受計画には、マンション住人に次の住居を提供したり、あっせんしたりするかについて代替建築物の提供等に関する計画も書き込まなければなりません。
- 決議合意者は、決議合意者等(例えば、決議に賛成した者や決議に賛成しなかったがマンション敷地売却に参加すると意思表示した者)の4分の3以上の同意で、都道府県知事等の認可を受けてマンション及びその敷地の売却を行う組合を設立できることとするとされています(マンション建替え円滑化法第120条)。マンション敷地売却制度を利用するに当たっては、マンション敷地売却制度の手続きを遂行するため法人格を持った「マンション敷地売却組合」を設立することが前提とされています(マンション建替え円滑化法第116条、第117条)。
- 組合は、決議に反対した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すことを請求できることとするとされています(マンション建替え円滑化法第124条第1項)。この請求を受けた者は売り渡すことを強制されることになります。
- マンション敷地売却を進めていくには、マンション敷地売却組合は、分配金取得計画をつくり、都道府県知事等の認可を受けなければなりません(マンション建替え円滑化法第141条)。この分配金取得計画では、権利消滅期日などを定めなければならないとされています(マンション建替え円滑化法第142条)。都道府県知事等の認可を受けた分配金取得計画で定める権利消滅期日に、マンション及びその敷地利用権は組合に帰属し、当該マンション及びその敷地利用権に係る借家権及び担保権は消滅することとされています(マンション建替え円滑化法第149条)。なお、マンション及びその敷地利用権は買受人に移転していくことになります。
- 組合は、権利消滅期日までに、決議に合意した区分所有者に分配金を支払うとともに(担保権者がいる場合は、その分配金は供託される《マンション建替え円滑化法第152条》)、借家権者に対して補償金を支払うこととされています(マンション建替え円滑化法第151条、第153条)。なお、居住者は権利消滅期日までにマンションをマンション敷地売却組合に明渡さなければなりません(マンション建替え円滑化法第155条)。
- 耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和することとされています(マンション建替え円滑化法第105条)。
※出典(公社)全国宅地建物取引業協会の重要事項説明資料「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替え円滑化法)」より転記。
株式会社ラムセスでは、令和に入り「マンション、団地、文化住宅」等の建替え相談が増加しております。理事長や管理組合関係者の方で区分所有建物や連等式建物等の建替え問題でお悩みの方は、株式会社ラムセスまでお問合わせください。きっと、お役にたてると思います。