密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(密集市街地整備法)

こんにちは、株式会社ラムセス代表の池田です。今回は『密集市街地整備法』についてご紹介いたします。この法律(密集市街地整備法)は、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、大規模地震時に市街地大火を引き起こす防災上危険な状況にある密集市街地について、再開発や防災街区の整備を目的として、1997年に制定されました。

密集市街地とは

その区域内に老朽化した木造建物が密集していることに加えて、道路や公園などの十分な公共施設がないこと、その他その区域内の土地利用の状況から、特定防災機能(火事または地震が発生した際に、延焼防止および避難上確保されるべき機能)が確保されていない市街地をいいます。不動産売買取引で、仲介役となる不動産会社では不動産売買取引時に『密集市街地整備法』に該当する地区は重要事項説明でこの内容を説明する義務があります。それでは見ていきましょう。

1.密集市街地とは当該区域内に老朽化した木造の建築物が密集しており、かつ、十分な公共施設がないことその他当該区域内の土地利用の状況から、その特定防災機能が確保されていない市街地をいいます(法第2条)。

2.特定防災街区整備地区内の建築等の制限

(1)特定防災街区整備地区(法第31条)密集市街地内の土地の区域については、当該区域及びその周辺の密集市街地における特定防災機能の確保並びに当該区域における土地の合理的かつ健全な利用を図るため、都市計画に地域地区として、特定防災街区整備地区を定めることができます。

(2)制限の内容(建築基準法第67条)特定防災街区整備地区内では、次の項目について定められることとされており、これらが定められると法令制限となります。
・建築物の種類(第1項)
・最低敷地面積(第3項、第4項)
・壁面位置制限(第5項)
・間口率制限(第6項)
・最低高さ制限(第7項)
・その他なお、敷地面積の最低限度の制限が定められていても特定行政庁が許可すると制限は受けなくなります(第3項 第2号)。

3.防災街区整備地区計画区域内の行為の届出等

(1)防災街区整備地区計画(法第32条)防災街区整備地区計画では、当該区域における特定防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図るため、当該区域の各街区を防災街区として一体的かつ総合的に整備することが適切であると認められるものについて、一定の条件に該当する密集市街地内の土地の区域について都市計画に定めることができます。

(2)制限の内容(法第33条)

① 防災街区整備地区計画の区域(地区防災施設の区域(特定地区防災施設が定められている場合にあっては、当該特定地区防災施設の区域及び特定建築物地区整備計画)又は防災街区整備地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、次の行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければなりません(第1項)。
・土地の区画形質の変更
・建築物等の新築、改築又は増築
・その他政令で定める行為

② 届出をした者は、その届出に係る事項のうち国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の30日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければなりません(第2項)。

4.防災街区整備事業と行為制限

(1)防災街区整備事業(法第2条第5号)密集市街地において特定防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図るため、この法律で定めるところに従って建築物及び建築物の敷地の整備並びに公共施設の整備等に関する事業をいいます。

(2)制限の内容

① 防災街区整備事業と建築等の制限(法第197条第1項)この事業が認可された地区内では、次の行為は都道府県知事等の許可を必要とします。
・土地の形質の変更
・建築物等の新築、改築、増築・移動の容易でない物件の設置・堆積、その他

② 個別利用区内の宅地の使用収益の停止(法第230条)この事業について、権利変換期日以降工事完了公告があるまでは、個別利用区(注)においては、原則として使用収益することができなくなります。(注)個別利用区とは、地区内で防災施設建築物以外の個々に利用される土地のことです。

5.施行予定者が定められている防災都市計画施設の区域内での行為制限

(1)制限の内容

① 建築の制限(法第283条第1項)建築物の建築については都道府県知事等の許可を受けなければなりません。

② 有償譲渡の制限(法第284条)土地、建築物等を有償で譲渡(売買など)をしようとするときは、施行予定者に届け出なければなりません。届け出ると一定期間譲渡することはできなくなります。

6.避難経路協定とその効力

(1)避難経路協定の締結(法第289条)

1.防災再開発促進地区(注1)の区域内の一団の土地の所有者及び借地権者(以下「土地所有者等」という。)は、その全員の合意により、火事又は地震が発生した場合の当該土地の区域における避難上必要な経路の整備又は管理に関する協定(以下「避難経路協定」という(注2)。)を締結することができます。(注1)防災再開発促進地区とは、都市計画に密集市街地の各街区について防災街区の整備を図る目的で、特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき地区として都市計画法第7条第1項による市街化区域内において定められた地区のことです。(注2) 避難経路協定は、市町村長の認可を受けなければなりません。

2.避難経路協定には次の事項が定められます。
①避難経路協定の目的となる土地の区域及び避難経路の位置
②次に掲げる避難経路の整備又は管理に関する事項のうち必要なもの
・避難経路を構成する道路の幅員又は路面の構造に関する基準
・避難経路における看板、さくその他の避難上支障となる工作物の設置に関する基準
・避難経路にその敷地が接する工作物(建築物を除く。)の位置、規模又は構造に関する基準
・その他避難経路の整備又は管理に関する事項
③避難経路協定の有効期間
④避難経路協定に違反した場合の措置

(2)避難経路協定の効力(法第294条)認可の公告があった避難経路協定は、その公告があった後において当該避難経路協定区域内の土地所有者等となった者に対しても、その効力が及びます。

(3)認可の公告後避難経路協定に加わる場合の効力(法第295条)避難経路協定区域内の土地の所有者で当該避難経路協定の効力が及ばないものは、認可の公告があった後いつでも、市町村長に対して書面でその意思を表示することによって当該避難経路協定に加わることができます(第1 項)。また、避難経路協定区域隣接地の区域内の土地に係る土地所有者等は、認可の公告があった後いつでも、当該土地に係る土地所有者等の全員の合意により、市町村長に対して書面でその意思を表示することによって、当該避難経路協定に加わることができます(第2項)。これらの場合、当該避難経路協定は、新たに避難経路に加わった者がその時において所有し又は借地権を有していた当該避難経路協定区域内の土地について、避難経路協定への加入についての公告(第4項)があった後において土地所有者等となった者に対しても、その効力を及ぼします(第5項)。

(4)一の所有者による避難経路協定の設定(法第298条)防災再開発促進地区の区域内の一団の土地で一の所有者以外に土地所有者等が存しないものの所有者は、避難経路の整備又は管理のために必要があると認められるときは、市町村長の認可を受けて、当該土地の区域を避難経路協定区域とする避難経路協定を定めることができます(第1項)。この避難経路協定は、認可の日から起算して3年以内において当該避難経路協定区域内の土地に二以上の土地所有者等が存することとなった時から、法第291条第2項の規定による認可の公告のあった避難経路協定と同一の効力を有する避難経路協定となります(第4項)。

★出典(公社)全国宅地建物取引業協会の重要事項説明資料「密集市街地整備法」より転記。

池田
株式会社ラムセスは、従業員一同、日々様々な法令について勉強しております。不動産売買のご相談は、株式会社ラムセスまでお問合わせください。きっと、お役にたてると思います。