アスベストを使用、または含んだ製品や建築物の解体・加工(改修)等では、法令による規制があります。それでは、順を追って説明していきます。
アスベストによる健康被害と法令による規制
アスベスト(石綿)は天然に産出される鉱物の一種であり、耐熱性・対磨耗性等に優れていたことから、昭和40年頃から平成2年頃にかけて大量に日本へ輸入されて、その多くが建材として使用されておりました。しかし、その後、アスベストに発がん性が認められたため、様々な法令等により、アスベストの使用やアスベストを含む製品の製造等が今日まで規制されてきました。また、建築物の解体時や改修時等にはアスベストの飛散を防止するための措置も法令で義務付けられました。
マンション・事務所ビル・工場等の場合
建築物の耐火被覆材・断熱材等として、鉄骨・はり・柱・壁・天井等の表面にアスベストを含む建築材料を吹き付け、施工を行ったものがあります。これが、「吹き付けアスベスト・吹き付けロックウール」と呼ばれるもので、劣化等によりアスベストが飛散しやすい状況となっている場合は、除去や囲い込みといった対策が必要となります。吹き付けアスベストは、アスベストとセメント等の結合材を混ぜたもので、耐火被覆用として、鉄骨造建築物のはり・柱等の表面に昭和38年頃から昭和50年の始めまで使用され、断熱用としては機械室(ボイラー室)・地下駐車場等の天井・壁に昭和31年頃から昭和50年頃の始めまで使用されておりました。吹き付けロックウールは、昭和50年に吹き付けアスベストが原則禁止になって以降、吹き付けアスベストの代用として、人造鉱物繊維のロックウールにアスベストを混ぜて使用がなされました。アスベストを混ぜて使用した期間は、昭和43年頃から昭和55年頃までですが、一部の工法(湿式)については、昭和63年頃まで使用されていたようです。一方、アスベスト成型板等が、平成16年10月まで製造されており、屋根材・外壁材・天井材・壁材・床材等に広い範囲で使用されてきました。これらは、繊維が固定されているため、通常の使用では飛散することはなく、健康上問題はないと言われておりますが、部材の破損やひび割れ等がある場合や、建物解体時・加工等をする際には、飛散する恐れがありますので、専門業者による法令に基づいた工事が必要です。また、アスベストを含有している保温材・耐火被覆材・断熱材等がビルのボイラー本体やその配管等にも使用されております。なお、事務所ビル・工場等の場合は、就業する従業員等の人体にアスベストの粉塵による被害や影響がないような措置や解体・加工する際の飛散防止措置等を講ずることが法令で義務付けられています。
戸建の場合
一般的な戸建住宅の場合、「吹き付けアスベスト・吹き付けロックウール」が使用されているケースはあまりありませんが、地下室や鉄骨造の倉庫・車庫等がある場合には、壁や鉄骨の表面等に「吹き付けアスベストや吹き付けロックウール」が使用されていることがあります。また、「アスベスト成型板等」も広い範囲で使用されてきました。したがって平成16年頃までに建築された建築物には、外壁・屋根(スレート)等にもアスベストが含有されている可能性があります。